こんにちは 藤沢ギフト歯科・矯正歯科の歯科衛生士です。

今回のテーマは、歯医者さんのいなかったむかしむかしのお話です。

太古の人類もお口の中の病気に苦しんでいたのでしょうか?

みなさんは「歯が痛い!」と泣きたい思いをしたことはありませんか?

現代は、歯医者さんで治療すれば、痛みから開放されますが、歯医者さんがいなかった時代はそうはいきません。

では、人々はお口の病気とどう付き合ってきたのでしょう。いつから歯の痛みに悩んできたのでしょう?

答えは、なんと「ヒト(ホモ・サピエンス=現生人類)」以前から。人類は、むし歯や歯周病による歯の痛みと、30万年以上も付き合い続けてきたようです。

たとえば、むし歯。ザンビアで発見された約30万年前のカブエ人の化石人骨には、すでにむし歯がありました。奥歯だけでなく、犬歯などの前歯にもむし歯がありました。

同じ頃、ヨーロッパを中心に分布していたネアンデルタール人からは、歯周病が発見されています。

ひどい例は、フランスのラ・シャペローサン遺跡で発見された約6万年前の化石人骨。推定年齢50~60歳で、ひどい歯周病のため、生前にほとんどの歯が抜け落ちていたようです。

実は、太古の人類には歯周病がよくみられ、その発生率は現代人以上かもしれないといわれています。

楊枝を使っていた痕跡も、世界各地で見つかっています。それは歯に刻まれた縦の溝。食べかすを掻き出すだけでなく、痛いところを、堅く尖ったもので強くこすったのでしょう。

2013年、スペインの研究者が、バレンシアの遺跡から出土した5万~15万年前のネアンデルタール人は「歯肉炎の痛みを和らげるために、ある種の植物の楊枝を使っていた」という論文を発表しました。

これは「治療の一種である」と話題になりました。

健康な歯を抜く、削る!縄文人のフシギな風習

今から1万2000年から2500年ぐらい昔、日本列島で狩猟採集生活をしていた縄文人には、健康な前歯をわざわざ抜く風習がありました。

縄文時代後期には成人男女のほとんどが歯を抜いていて、中には8本もの抜歯の跡がある人骨も発掘されています。

にっこり笑うと、所々ぽっかりと歯が抜けていて、暗い穴が見える……。それがいいなんて、なんとも不思議な感性です。

硬くて丈夫な歯は、霊的な力のシンボルでした。だから成人や婚姻などの通過儀礼や、病気が治るように祈るときに、抜歯をしたのだと見られています。

痛みに耐えることで霊的なパワーが得られたのかもしれません。

さらに不思議な人骨も発見されています。

叉状研歯を持つ縄文時代後期の頭蓋骨 (愛知県歯科医師会所蔵)

それは、4本の前歯にフォークのような切れ込みを入れたもの。

これは、叉状研歯(さじょうけんし)と呼ばれ、集団のリーダーなど「特別な役割」の証だったようです。

ちなみに歯を削る道具は石器です。もちろん麻酔などありません。どれほど痛かったことでしょう。

縄文人の歯の状態はどんなものだったのでしょうか

歯並びはよいのですが、年齢以上にかみ合わせ部分のすり減りが激しくて、中には、馬の鞍のようになっているものもありました。

原因は、砂混じりの硬い食べ物を食べていたことと、動物の皮をなめすときや、樹皮をかんで繊維を得る作業のときに、道具として歯を大いに活用していたからです。

「それならむし歯は少なそう」という印象がありますが、近年の研究をまとめた『古病理学事典』によれば、縄文人のむし歯発生率は8.2%。

意外に多いのです。同じ新石器時代に属している7600年前のアメリカ先住民の約20倍、近代のグリーンランドのイヌイットの約4倍です。

理由は、縄文人が動物の肉だけでなく、クリやイモなど糖質を含む豊かな食生活を送っていたからだろうと考えられています。

美味しいモノにつられると、思わぬ落とし穴がある、というのは現代も同じですね。
9月に入り「食欲の秋」という美味しい食べ物が豊富な季節となりました。
みなさんも、カラダの栄養、ココロの栄養を蓄えながら健康管理にお気をつけください。
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