①CTについて
まず一つ目のCTですが、3次元的な画像を得ることができるので、親知らずの抜歯に関係する神経の位置を正確に知ることができます。
親知らずの根の近くには太い神経があるのですが、この神経を損傷すると最悪の場合は下唇に生涯にわたり麻痺が残ることがあります。全ての抜歯でCTが必要ではありませんが、少しでも危ない場合はCTを撮るべきと考えています。
”親知らず”は前から数えて8番目の歯で、お口の中の最も奥に生える歯です。
18歳頃に生えます。親御さまがお口の中を見る年代ではありませんので、親が知らないうちに生える、という意味で親知らずと呼ばれます。
全員ではないですが、生える際に痛みを訴える方もいらっしゃいます。歯が押される感じがする・違和感があるなどの訴えもあります。
関係があると言われていますが、明らかな証明はなされていません。
親知らずが生える力が他の歯に加わり、他の歯が押されて前歯がガタツクなどの説はイメージしやすいですが、証明は難しいようです。
ただし、親知らずがまっすぐ余裕を持って生えない場合は、口の中のスペースが足りないということです。その場合、他の歯もスペース不足により、デコボコな歯並びになっている可能性は高いと言えます。
最も頻発するのは、親知らずの周りの歯肉の炎症で、”智歯周囲炎”といいます。
半分だけ歯肉から顔を出している親知らずや、水平に埋まっている親知らずなどで起こりやすい疾患です。原因は虫歯や歯周病と同様に細菌です。
磨きにくい状態の親知らずは、細菌の住処になってしまいます。普段は免疫力で炎症を抑えていますが、体力が一時的に落ちたときや、菌が増えすぎてしまった際に、親知らず周囲の組織が炎症を起こします。
智歯周囲炎では痛みや腫れの他に、口が開きにくいなどの症状が出ることがあります。
その他にも痛みの原因があります。親知らずが生えてる際に盛り上がった歯肉が、他の歯と噛み合って痛いことがあります。 また、親知らずが生える際に押される歯が、押されて痛いことがります。親知らずが虫歯になっていて、痛むこともあります。
まず一つ目のCTですが、3次元的な画像を得ることができるので、親知らずの抜歯に関係する神経の位置を正確に知ることができます。
親知らずの根の近くには太い神経があるのですが、この神経を損傷すると最悪の場合は下唇に生涯にわたり麻痺が残ることがあります。全ての抜歯でCTが必要ではありませんが、少しでも危ない場合はCTを撮るべきと考えています。
次に二つ目の説明ですが、これに関しては言うまでもありません。
なぜ抜くのか、どのように抜くのか、抜いた後はどうなるのか、という話は時間を十分にとって説明し、ご理解いただくのが必須だと思っています。
三つ目の、滅菌ですが、親知らずの抜歯は外科治療ですので、最高レベルの滅菌が必要です。
最近では感染対策の意識が高まり、多くの医院でクラスBの滅菌機(*滅菌にはクラスB、クラスS、クラスNがあり、クラスBが最高レベルです。)を導入していますが、中には導入していない医院もあります。
この設備を有する医院は必ずと言って良いほど、ホームページでアピールしていますので、その点をチェックするのが良いと思います。
もちろん当院にはクラスBの滅菌機があります。
ほとんどの親知らずの抜歯に対応できます。
ただし、歯の根が神経に接している場合や、埋まっている親知らずを抜歯するために非常に多くの骨を削らなくてはならない場合はご紹介させていただきます。
通常の歯の抜歯と同様の処置を行います。具体的には、ヘーベルという器具で、歯を骨から脱臼させて、鉗子という歯を挟む器具を使用して歯を揺さぶって抜きます。
麻酔→ヘーベルで脱臼→鉗子で抜去→止血
抜歯の難易度 | 低 |
---|---|
抜歯にかかる時間 | 麻酔をする時間を入れて30分以内 |
抜歯の費用 | 保険診療にて2,000円程度 (レントゲン撮影の費用は別途かかります。) |
切開を行い、粘膜をよけて親知らずの頭を露出させます。もし深く骨に埋まっている場合は骨を削って親知らずの頭を露出させます。
次に横向きになっているので、親知らずの頭をバーを用いて切断して取り除きます。
そうすることで、親知らずと手前の歯の引っ掛かりを除去でき、親知らずの根の抜歯が可能となります。
残った根は、ヘーベルを用いて、骨から脱臼して取り除きます。その後切開した部位を縫合します。
これらの流れは、横向きで完全に埋まっている場合も、頭の一部が出ている場合も同様です。
麻酔→切開・剥離→骨削合→歯冠分割→歯冠抜去→歯根抜去→縫合→止血
抜歯の難易度 | 中〜高 |
---|---|
抜歯にかかる時間 | 通常は麻酔を入れて30分以内ですが、位置が深い場合や神経が近い場合は60分の予約枠をとります。 |
抜歯の費用 | 保険診療にて5,000円程度 (レントゲン撮影の費用は別途かかります。) |
まっすぐに埋まっている場合は、上の歯も下の歯も、同様の処置の流れです。
埋まっているので、切開が必要です。切開を行い、粘膜をよけて親知らずの頭を露出させます。
もし深く骨に埋まっている場合は骨を削って親知らずの頭を露出させます。露出した親知らずに対して、ヘーベルを用いて、骨から脱臼させて抜歯します。その後切開した部位を縫合します。
麻酔→切開・剥離→骨削除(必要時)
→ヘーベルで脱臼→鉗子で抜去→縫合→止血
抜歯の難易度 | 中〜高 |
---|---|
抜歯にかかる時間 | 埋まっている位置や深さによって30分以内での処置ができる場合と、60分の時間が必要な場合があります。 |
抜歯の費用 | 保険診療にて5,000円程度 (レントゲン撮影の費用は別途かかります。) |
例えば、左下の一番奥の歯の虫歯が進行して、抜歯するしかなくなったとします。その時に上下左右のどこかの親知らずが健康な状態で残っていれば、左下の一番奥を抜歯して、その部分に親知らずを移植するのです。移植した親知らずは、最初は揺れていて安定しないのですが、2ヶ月ほどすると、ほとんど揺れも収まり、普通に噛めるようになります。このように、親知らずが大活躍するときがあるのです。
移植は絶対にうまくいくというわけではありませんが、成功すれば大きなメリットが得られます。
インプラントは高額ですし、ブリッジは両隣の歯を削る必要があります。親知らずの移植は保険適応であり、他の歯へのダメージはありませんので、健康的です。
親知らずが残存しており、その他の奥歯で抜歯が必要な歯がある、という状態であれば移植を検討することには価値があります。
ただし、適応症は限られます。親知らずの根が複雑な形でないこと、大きな虫歯や、歯周病がないこと。抜歯が必要な歯が歯周病ではないこと、などが挙げられます。
また、横に埋まっている親知らずは、抜歯の際に損傷する可能性が高いので、ほとんどの場合、移植の適応にはなりません。
移植を行った親知らずには根の治療(根管治療)が必要です。なぜなら、親しらずを抜いた際に、神経が死んでしまうからです。神経が死んだ状態で放置すると細菌が繁殖する場になってしまうので、根の治療を行います。根の治療後は被せ物を装着するか、樹脂を詰めて治療完了です。
当院では、将来の移植の可能性も考慮の上、抜歯すべきか否かを判断しています。
【①移植前レントゲン写真】
【②抜歯後、移植するための穴を形成した】
【③抜歯した歯の根には大きな亀裂があった】
【④移植のために右下から抜歯した親知らず】
【⑤親知らずを移植して、糸で固定】
【⑥親知らずが定着し、被せ物を装着前】
親知らずの抜歯は大変だというイメージがあると思います。特に横向きで埋まっている下の親知らずは、切開が必要ですし、抜歯自体に30−45分程度の時間がかかるので、患者さんにはご負担をおかけします。
また、術後の痛みや、腫れも親知らずの抜歯が大変だというイメージを強くしています。下の顎は骨が硬く、その骨を削って抜かなければならないので、上の親知らずよりも痛みや腫れが出やすいのも事実です。なるべく骨を削らないことを心がけていますが、それでも3−4日は痛み止めの内服が必要です。
その痛みを軽減する薬があります。テルプラグというものです。
テルプラグはスポンジ状になったコラーゲンの塊で、抜歯した部位に入れる薬です。抜歯した部位を保護する作用と、治癒の促進作用などがあるので、抜歯後の痛みが軽減します。全ての抜歯に必要ではありませんが、特に下の親知らずを抜いた後は、お勧めできる薬です。
テルプラグ | ¥3,300 |
---|
⁕料金は全て税込表示になります
ガーゼを10分ほど噛んで、圧迫止血をしてください。
強めのうがい、運動、飲酒は再出血の原因となるので、抜歯当日は控えてください。
また、入浴も控えていただき、シャワーを浴びる程度にしてください。
うがいをしたり、唾を吐いて血が滲んでいることが一晩程度続きます。持続的に多量の出血がなければ自然に止まります。
麻酔は1~2時間程度効いていると思います。その間に痛み止めを内服してください。
指示された通りに薬を内服してください。特に抗生剤は処方された分量がなくなるまで定期的な内服を継続してください。自己判断で内服を止めると耐性菌を作る一因となり、次回から抗生剤が効きにくくなる可能性があります。
痛みが落ち着いた後に再び痛みが強くなることがあります。この場合、「ドライソケット」や「術後感染」を疑うので、必ずご連絡をください。
腫れは抜歯翌日から出現し、1週間程度で落ち着きます。
内出血が皮膚側に生じることがあります。血液成分の変色により頬が黄色くなることがありますが、一時的なもので経過とともに消失します。
抜歯により歯肉に開いた穴は、徐々に埋まっていきます。
穴が完全に消失するまでに2ヶ月程度かかります。
処置部位 の周囲を磨く場合は、傷をつけないようにそっと磨いてください。
その他の部位はしっかり磨いてください。歯磨きが不十分だと術後感染の原因となります。
上の親知らずと下の親知らずで注意点は変わります。
上の親知らずは抜歯後も腫れることはあまりありません(非常に稀に強く腫れる方がいます)。また、痛みもそれほど強くなく、痛み止めを3日程度飲めば収まります(痛み止めを飲まずに済んだという方もいます。)
さらに特徴的なのは、上顎洞との関係です。上顎の骨には上顎洞という空洞がありますが、上顎洞は上の親知らずの根と近い位置にあり、親知らずの根が上顎洞内に突き出ていることがあります。この場合に親知らずの抜歯を行うと、親知らずを抜いた穴と上顎洞がつながります。
つまり、口と上顎洞が交通することになります。この結果、口に含んだ水分が上顎洞へ流れ込み、それが鼻に流れ込み、鼻から出るなどという状況が生じます。また、鼻をかもうとすると空気が口に漏れるということもあります。こういった症状が出る場合は口と上顎洞が交通していることを示すものですので、すぐにご相談ください。
もちろん抜歯した際に術者が気付くことが多いので、すぐに状況を説明することがほとんどです。空いた穴は通常治癒と共に塞がりますので、大きな心配はいりませんが、稀に穴が残ることがあり、その場合は追加の処置が必要となります。
次に下の親知らずですが、上と違って痛みや腫れが強く出やすいことが特徴です。痛みに関しては痛み止めでコントロールできることがほとんどですので大きな心配は必要ありません。痛みは抜いた直後、麻酔が切れた時がピークとなり、経過とともに1週間程度で落ち着きます。一方腫れはステロイドなどの特殊な薬を使わない限りほぼ確実に生じるものです。残念ながらステロイドは免疫を抑制してしまうので、基本的に使用しません。腫れは抜歯の翌日、翌々日頃がピークとなり、1週間程度で落ち着きます。
また、下の親知らずで知っておくべきことは親知らずの根が下唇の神経と近いということです。この神経を傷つけたり、切断してしまうと、最悪の場合は生涯にわたり下唇に痺れが残ってしまいます。軽い症状であればビタミン剤の内服で治癒することもありますが、可能な限り痺れが生じることを術者は避けるべきです。そのため神経が近くにあると考えられる場合はCT撮影を行い、位置を正確に把握する必要があります。
埋まっている下の親知らずを抜歯した時が最も腫れます。腫れの程度は他人から見てわかるくらいです。マスクをすればわからないことがほとんどです。腫れのピークは抜歯をして2日後くらいで、その後徐々に引いていき、1週間程度で消失することが普通です。
もちろん歯の状態、体調、皮膚の伸びやすさなどでも腫れの程度は変化しますので、人それぞれとも言えます。
抜歯後2日後くらいが腫れのピークですが、それを過ぎてもどんどん腫れが増していくという場合は危険と言えます。この場合は細菌感染が疑われますので、抗生物質の変更や抜歯部位の再処置を検討します。すぐにご連絡ください。
親知らずの抜歯を実施している医院と、そうでない医院があります。
特に埋まっている親知らずの抜歯は比較的難しく、神経損傷の可能性があるので、口腔外科を紹介される場合が多いでしょう。
当院には口腔外科の在籍経験のある歯科医師がおりますので、中難度までの親知らずの抜歯を行なっています。
高難度の親知らずは患者様のご負担が大きいため、専門の医療機関にご紹介しています。
難易度は親知らずの深さ、方向、形、神経との距離、年齢、口の開く量、全身疾患などを総合に判断しており、よほど簡単だと判断しない限りCT撮影を行います。
大きな病院に紹介で行くのは心理的なハードルがあるかと思います。
親知らずの抜歯についてご興味ある方はお気軽にご相談ください。
【所属・受講セミナー】
・日本歯周病学会
・日本顎咬合学会
・弘岡秀明歯周病学コース
・マイクロエンドセミナー
・プチ矯正セミナー
・アライナー矯正の流儀
・インビザラインドクターライセンス
・日本矯正歯科学会
・日本歯科薬物療法学会
・石井歯内療法研修会セミナー
・Dr森下矯正基礎臨床コース
・セファロ分析セミナー
・エムドゲイン再生療法認定コース受講
など学会参加含めて多数
院長紹介詳しくはこちら