ラバーダム防湿について
こんにちは。藤沢ギフト歯科・矯正歯科の黒木です。
今日はラバーダム防湿について記事を書かせていただきます。
ラバーダム防湿はゴムのシートで治療対象となる歯をその他の歯と隔離する感染予防法です。
誤飲防止や周りの組織の保護などのメリットがありますが、何と言っても感染予防が最大の目的です。
何の感染を予防するかというと、口の中にいる細菌が、治療対象となる歯に感染することです!菌は口の中のいたるところに存在し、唾液にも含まれていますので、術者の指が唾液に触れて、その指で器具を触ればたちまちに器具が感染源となってしまいます。
特に活躍するのが歯の根(根管)の治療(神経の治療、根管治療などと呼びます。)の際です。根管治療をする場合は、2通りのパターンがあって、それは
・神経がズキズキしてしまっているので、神経を除去しなければならない時
・すでに神経は死んでしまっており、根管内にばい菌が巣を作ってしまっている時
です。
前者の場合は、根管にはほとんど細菌はいませんので、細菌が根に入り込むのを防止しながら処置をしなければなりません。この時にラバーダム防湿をしていると細菌が感染する確率を減らすことができます。
後者の場合は、歯の内部に菌がたくさんいて、その菌を除去することが必要になります。ラバーダム防湿をしていないと、唾液に触れた指や器具から、感染のリスクが高まります。菌を取り去る処置をしているのに、歯の中に新たな菌を送り込んでいるかもしれないのです。
どちらの場合もラバーダム防湿を行なって、歯の中に菌を感染させることを予防しながら処置を進めるのが効果的です。
実はラバーダム防湿は特別なことではなくて、基本手技の一つです。歯学部では結構序盤に習いますし、実習もあります。さらには衛生士学校でも、衛生士の卵が実習する処置でもあります。
さて、日本ではどれくらいの歯科医院でラバーダム防湿を行なっているのでしょうか?
少し調べてみましたが、2003年のデータしか見つかりませんでした。それによると、根管治療の専門学会でその会員がラバーダム防湿を必ずする割合が25%程度で、会員以外だと5%程度だったというようです。
当然学会の会員以外の歯科医師の方が多いので、ラバーダム防湿を普通に行う歯科医院に出会う確率は低いはずです。
それにしても、この頃は学会員でも4人に1人しかラバーダム防湿をしていなかったのですね。
ただし、アンケートでは「必ず行なっている。」という設問になっていますので、少し厳しい感じもします。
私も必ずではなく、明らかにラバーダム防湿を行なった方が有利と思う時に、説明させていただき、ご同意をいただいた上で行うようにしていますので、「必ず」には該当しないなぁと思いました。
2021年現在はどうなっているのかが気になりますが、ラバーダム防湿を必ずではないものの必要時は取り入れているというスタンスの歯科医師は結構増加していると思います。
知人や後輩と話していても、「前はラバーダムやってなかったけど、今は時々やってる。」と言う歯科医師は何人もいました。私もその1人です。
年配の歯科医師でラバーダムを行なっている先生はかなりこだわりのある一握り。
それより下の世代では、勉強会などへの参加を機に取り入れる先生が少し増えて、我々の世代(30〜40代)ではもう少し増える。
その姿を見ている後輩はよりラバーダムに取り組みやすくなる。
といった感じではないでしょうか?
となると、今後も少しずつ増加していくのだと思います。
ラバーダム防湿を取り入れることの最大の障害は、「面倒臭い」、「コストに見合わない」と言うことです。
医療者がそんなことを考えてはいけない。と言う声も聞こえてきそうですが、これが現実です・・・。
「面倒臭い」と言うのは実はすぐ越えられる壁です。実際やってみると根管治療がしやすくなるので、ラバーダム防湿は治療の前処置という位置付けとして認識できます。
あとは、コストですね。保険診療においてこの壁をどう越えていくのかは課題だと思います。
ちなみに、アメリカのラバーダムの使用に関する2015年の調査データを見つけました。
専門医は90%以上ですが、一般歯科医でラバーダム防湿を行なっているのは50%程度という結果でした。
これは意外でした。
「欧米ではラバーダムは当たり前。」というのが私の中ではなんとなく心に残っている言葉です。誰に聞いたかわかりませんが、さすが欧米だな〜。と思った記憶はあります。
それが、半数の歯科医師しか行なっていないという実態でした。
行わない理由の上位にはやはり「面倒」というのはランクインするようです。
私はラバーダム防湿を絶対しなければいけない!とは考えていませんが、予後が良くなる確率を大きく上げられる(予後不良の確率を下げられる)と思える場合は積極的にご提案しています。
「医療は確率のアート」という言葉がありますが、良いことが起きる確率を上げたいですからね。
さて、ラバーダム防湿に関して思うところを書かせていただきましたが、今後日本の歯科医師のトレンドがどう変わっていくのか興味がありますので、追加の調査を期待して待ちたいと思います。
藤沢にお住いの方もそうでない方も、ラバーダム防湿にご興味がありましたら、ぜひ藤沢ギフト歯科・矯正歯科までお越しください。